トガツキ。

モノクローム・スカーレット

寂しさを映す朱い夕暮れに
そっと頬を寄せて耳を澄ませていた
窓辺を駆ける遠い足音
途切れ途切れになる柔い記憶の底

いつかその手を取ってゆけると
信じていた

繰り返す僕の呼吸に合わせて息をする
誰にも知られずに泣いていた 日々を 君を

寂しさを灯す部屋の体温
掠れた細い文字とインクの香り

確証なんてどこにもなかったけれど
大丈夫だと言いたかった
言ってあげたかった

僕の描いた朝は君の瞳に溶けて消え
星に追われた空の端にまた夕日が落ちる

記憶と記憶を繋いで
僕が探す語り部はいつも
まるい空洞を包み込んで
飾り立てた箱庭の世界の中

いまはもう ただ
目に見える範囲の風景。

2016.09.09
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